コーヒー農家は、ちゃんと儲かっているの?
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前回、
「コーヒー価格は、なぜこんなに上がっている?」
というお話をしました。
では、ここでひとつ疑問が出てきます。
コーヒーがこんなに高くなっているなら、
「コーヒーを作っている農家さんは、かなり儲かっているんじゃないの?」
と。
私もコーヒー豆を扱う仕事をしていますから、これはとても気になるところです。
ところが実際には、
コーヒーの価格が上がったからといって、すべての農家さんが豊かになっているわけではありません。
今日は、一杯のコーヒーの「もっと向こう側」の話をしてみたいと思います。
コーヒーは、誰かが畑で育てています
私たちが毎日のように飲んでいるコーヒー。
焙煎された茶色い豆を見ていると忘れてしまいそうになりますが、もともとは農作物です。
コーヒーの木を育て、
花が咲き、
実がなり、
熟した実を収穫する。
そして、果肉を取り除き、乾燥させ、選別する。
ようやく私たちが「コーヒー豆」と呼んでいるものになります。
しかも世界のコーヒー生産を支えているのは、大規模な農園ばかりではありません。
家族を中心に営まれている、小さな農園もたくさんあります。
つまり私たちが飲んでいる一杯は、
世界のどこかの農家さんが育てた農作物
なのです。
コーヒーが値上がりした=農家が大儲け?
ここが少し複雑なところです。
確かに、コーヒーの国際価格が高くなれば、生産者が以前より高い価格で販売できるケースはあります。
それ自体は、農家さんにとって良いことです。
でも、
売値だけが上がっているわけではありません。
肥料代。
農薬や農具。
収穫する人たちの人件費。
コーヒーを精製するための費用。
農園から運び出すための輸送費。
農家さん側の「作るためのお金」も必要です。
さらにコーヒーは農作物ですから、天候にも大きく左右されます。
干ばつになれば収穫量が減る。
雨が多すぎても問題が起こる。
病害虫が発生することもある。
価格が高くても、
そもそも収穫できるコーヒーが少なければ、農家の収入が増えるとは限らない。
ここが難しいところです。
しかも、コーヒーの値段は農家だけでは決められません
もうひとつ大きな問題があります。
コーヒーには国際的な市場価格があります。
そのため、
「今年は肥料代が上がったから、この価格で売りたい」
と農家さんが自由に価格を決められるとは限りません。
私たち珈琲丸なら、
生豆の仕入れ価格や包装資材、電気代などを計算して、
「このコーヒーは200g○○円にしよう」
とある程度、自分たちで決めることができます。
ところが、生産者側はそう単純ではありません。
一生懸命作ったコーヒーでも、市場価格が下がれば収入に影響します。
反対に価格が上がったとしても、それが来年も続く保証はありません。
「今年いくらで売れるのかわからないものを、一年かけて育てる」
そう考えると、なかなか大変な仕事です。
「生活できる価格」という考え方
近年、コーヒー業界では、
Living Income(生活所得)
という考え方が注目されています。
簡単に言えば、
農家さんとその家族が、食事をして、家に住み、子どもを学校へ通わせ、医療を受け、そして翌年もコーヒーを作り続けられる。
そんな暮らしを維持するためには、
いったいいくらの収入が必要なのか?
という考え方です。
単純に、
「去年より高く買ったから大丈夫」
ではありません。
農家さんがコーヒーを作り続けられる価格になっているのか。
そこまで考えなければ、本当の意味で「持続可能」とは言えないのだと思います。
農家が儲からなくなったら、どうなる?
ここは私たちコーヒーを飲む側にも関係があります。
もし、一年間一生懸命コーヒーを育てても生活できないとしたら。
皆さんなら、その仕事を自分の子どもに継がせたいと思うでしょうか?
もしかしたら、
「別の仕事をしたほうがいいよ」
と言うかもしれません。
実際、コーヒー産地では、生産者の高齢化や次世代の担い手も大きな課題になっています。
コーヒー農家がいなくなれば、
当然ですが、
私たちが飲むコーヒーもなくなります。
これは遠い国だけの問題ではないんですね。
安いコーヒーは、本当に「お得」なのか?
もちろん、安いことが悪いわけではありません。
私たちだって、同じものなら安く買えたほうが嬉しい。
でもコーヒーの場合、ときどきその価格の向こう側を想像してみてもいいのかもしれません。
このコーヒーは、
どこの国で作られたのか。
どんな人が育てたのか。
どんな方法で日本までやってきたのか。
そして、
その価格で、作った人も幸せなのだろうか。
コーヒーを飲むたびに考える必要はないと思います。
でも、たまにはそんなことを思いながら飲む一杯があってもいい。
私たち小さな珈琲屋にできること
珈琲丸が世界のコーヒー産業を変えられるわけではありません。
高津駅前の、小さな珈琲豆屋です。
それでも、
ちゃんと作られた豆を選ぶ。
その豆を大切に扱う。
そして、小さな焙煎機で少量ずつ焙煎して、お客様に届ける。
そんなことならできます。
世界のどこかで、一年間かけて育てられたコーヒー。
それを私たちが焙煎して、
皆さんが淹れて、
一杯のコーヒーになる。
そう考えると、
いつもの一杯が、ほんの少し違って見えてきませんか?
作る人も、売る人も、飲む人も。
みんなが「コーヒーっていいな」と思える関係が、長く続いてほしい。
今日もそんなことを考えながら、
珈琲丸は、小さな焙煎機を回しています。